チェンバロの歴史

チェンバロの歴史

 

チェンバロ成り立ちとその歴史

チェンバロは14世紀頃に出現した鍵盤を使い弦をはじき発音する、撥弦鍵盤楽器の一つである。本体はグランドピアノのような形のものから箱型、扇型のものまで様々。
一般的にチェンバロと呼ばれるものはグランドピアノ型のものを指す。それに対し長方形の箱型でごく小さく軽いチェンバロをヴァージナルと呼ぶ。また扇型で小型のものをスピネットと呼ぶ。
チェンバロの発祥の詳細はよくはわかっていないが、ハープのような楽器に弦を弾く機構を取り付け、鍵盤で演奏できるようにしたものが最初だと言われている。
その後16世紀にイタリアで現在の様式にほぼ完成された。これは「イタリアンタイプ」と呼ばれ、比較的軽く薄い外装で1段鍵盤のものが殆ど。グリマルディの作品が有名である。
その後その技術がフランドル地域(現在のオランダ、ベルギー、フランスなどの一部)に伝わり大きな発展を遂げる。外装が厚く頑丈になり、弦を強い張力で張ることができるようになる。音は力強くなり、鍵盤も2段のものが開発され、音色と表現力に幅がでるようになった。このフランドル地方のという意味のフレミッシュから「フッレミッシュタイプ」と呼ばれる様式となった。チェンバロの完成形と言われ、現在一般的にチェンバロと言えばこのフレミッシュタイプを指すことが多い。特にフレミッシュで活躍し多くのチェンバロを製作したルッカースの「ルッカースモデル」は新作チェンバロの元になることが多い。
チェンバロはバッハやハイドン、モーツァルトが多くのチェンバロ曲を作曲したこともあり17世紀後半まで隆盛を極めた。18世紀ごろにはピアノが開発され、鍵盤楽器の主役の座は次第にピアノに奪われていった。
しかし近年バロック音楽や古楽を当時の音で楽しむ古典楽器ブームにより、次第に復興。バブル期では非常に人気が高まり、個人製作者も増えさらには大手メーカーも参入した。現在は少し落ち着いた感があるもののファンはまだ多く、個人製作者も多く作り続けている。
発音原理は鍵盤を押すとその後端に接触しているジャックが上がり、それに付いているプレクトラムが弦をはじき発音させる。音は鋭く華麗で音量もクラヴィコードよりも大きい。しかし音の強弱は付けにくい。
国によってハープシコード、クラブサン、キーフリューゲルとも呼ばれている。


チェンバロの種類

一般的にチェンバロよ呼ばれるものは長さが200cm前後のグランドピアノ型の比較的大型ものを指す。設計や機能、弦の種類や張力により、1段鍵盤のものは180~200cmほどが多く、2段鍵盤のものやイタリアンは240cmを超えるものまである。音域は5オクターブほど。
 

ヴァージナル

長辺が130cm、短辺が50cmほどの長方形の箱型でごく小さく軽いチェンバロをヴァージナルと呼ぶ。鍵盤は長辺に埋まる形で取り付けられ4オクターブほどで音域は狭い。そのため演奏できる曲は限られている。バス部分ではショートオクターブを採用し、簡易的に音域を広げる工夫もある。弦は1音1本が通常である。当時は家庭用というよりは裕福な家庭用として普及していたらしい。フェルメールの絵画「ヴァージナルの前に座る女」にヴァージナルが描かれていることは有名である。
 

スピネット

また扇型で広い部分の長さが170cm程度、鍵盤のある辺が100cmほどの小型のものをスピネットと呼ぶ。5オクターブ弱の音域でヴァージナルよりは広いため演奏できる曲は多くなる。弦は1音1本が一般的。近年まで河合楽器や東海楽器(トーカイチェンバロ)で作られていた生産型のスピネットチェンバロは日本におけるこの楽器の普及に貢献した。