トランペットのラッカー剥がし
トランペットのラッカーを剥がす方法と手順
どうしてラッカーを剥がすのか
理由の一つにラッカー仕上げのトランペットは長年使用することにより表面の摩耗や、塗面の劣化、サビなどが原因でラッカーが剥がれてしまいます。剥がれた部分は腐食が進み表面が凸凹になったり、マダラに変色することで見栄えが悪くなります。
もうひとつの理由として、音質・音色の改善が挙げられます。トランペットにはその個体特有の音色がありますが、その音色が気に入らない場合にラッカーを剥がすという方法もあります。ラッカーは真鍮地金の上に柔らかい塗膜をかけているため、振動をある程度妨げています。このためラッカー仕上げの楽器は比較的落ち着いた音色となります。反対にノーラッカーの楽器は振動を妨げる塗膜がないため、その楽器本来の鳴りや響きが引き出されます。
現在は少なくなりましたが、往年の名プレーヤーはノーラッカーのトランペットをよく使用していました。特にシカゴ交響楽団の黄金期を支えたアドルフハーセスのノーラッカーのトランペットとその音、テクニックは誰もが憧れたものでした。
上記のような理由で、よくラッカーを剥がしてノーラッカーのトランペットにしたいという相談を受けます。ここでは当店で行っているラッカー剥がしの方法をご紹介します。
用意するもの
- 塗料用剥離剤
- ゴム手袋(耐油のものがよい)※スケルトンが皮膚につくと大変痛いです。
- ゴーグル
- 塗料缶
- 塗料用ハケ
- 水道、ホースなど
- 不要な雑巾やスポンジ、ナイロンブラシなど柔らかいもの
- トランペット用フレキシブルクリーナー
- メタルポリッシュ
- ポリシングクロス
手順
今回はトランペット全体のラッカー剥がしをする工程です。
ご注意(当店ではこの作業に関する責任を負えません)
ラッカーを剥がすと外観や音色などは二度と元に戻りません。
一般的なラッカー塗装を例にしています。特殊な塗料や塗装の場合は、今回の方法で剥がれない場合も考えられます。
剥離剤は皮膚に付いたり目に入ると大変痛く危険です。
剥離後洗い流す際は刺激臭や汚水が発生します。作業する環境にご注意下さい。
工程
- トランペットの下準備として部品を分解します。ピストンを3本とも外します。スライドも同様に全部取ります。
- 作業は外(コンクリートの上など)で行うとよいでしょう。近くに車など剥離剤が付くとまずい物が無いようにします。
- 作業はできるだけ日陰で行って下さい。剥離剤が乾いてうまく洗えない場合があります。
- 作業する場所に新聞紙などを敷きます。落ちた剥離剤や塗面が回収しやすいです。
- 長袖の服、ゴム手袋、ゴーグルを着用します。
- 剥離剤の缶のキャップを外す。このとき内部のガスが膨張していて吹き出した際、一緒に剥離剤が飛び散る場合があります。目に入ると大変危険です。布をかぶせてその上からキャップを引き上げるようにすると安心です。
- 剥離剤を塗料カンに移します。
- 剥離剤は塗料用刷毛を使用してトランペット全体に塗ります。
- トランペットを立てるか、手でぶら下げるように持ちます。
- ハケにたっぷり剥離剤をつけ、トランペットのラッカー面に手早く塗っていきます。できるだけ管内部に入らないようにします。本体全体にくまなく塗ります。
- できたらトランペットを新聞紙の上に寝かせます。次にスライドも同様に行います。
- すると数秒~十数秒でラッカー塗料がみるみるブクブク浮き始めます。
- そのまましばらく放置して確認します。剥離剤がうまく乗っていなかったりムラがある部分はラッカーが残っているのでもう一度ハケで塗り込みます。
- 5分程度で綺麗に全てラッカーが剥がれます。
- 放置しすぎると剥離剤が乾き、洗い流しにくくなるのでその前に洗い流します。
- ホースから水をゆるく出し、トランペットを洗います。剥離剤は白く変色し汚水が発生するのでご注意下さい。
- 流すだけでもある程度落ちますが雑巾やスポンジ、柔らかいブラシなどを使いこすり取ると効果的です。硬い金属ブラシ等は楽器表面を傷つけます。
- 管の内部に入っていなくても念の為に、フレキシブルクリーナーを使い管内部やベル内部、ピストン部分もよく洗い流します。
- 乾いた布でよく水分を拭き取り、乾燥させます。
- 乾いたら剥がし残しがないかよく確認します。残っている場合は10に戻り繰り返します。
- 完全に剥離できたら、しっかり内部まで乾燥させます。
- ラッカーを剥がした後は真鍮地金に色むらや変色ができるので、メタルポリッシュをポリシングクロスに付けて磨き上げます。
- 磨き上がったら、トランペットを元通り組み立てます。試奏して確認し完了です。
ノーラッカートランペットのお手入れ
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