トランペットの表面仕上げ
トランペットの表面仕上の種類・特性・方法
トランペットの表面仕上の方法や種類特性について説明いたします。クリアラッカー・銀メッキ・金メッキ・ノーラッカー・ゴールドラッカー・ニッケルメッキなど。
クリアラッカー仕上げ
トランペットの真鍮地金を磨きその上から透明なラッカー(エポキシラッカーが多い)を吹き付け自然乾燥又は焼付け(強制乾燥)により乾燥・硬化させた塗装方法です。吹き付け自体は静電塗装という方法をとる場合もあります。ラッカーは地金に比べ柔らかいため地金の振動を伝えやすく、パワフルで音抜けがよく艶やかな音色になるといわれます。トランペットの手入れもしやすく耐久性もあるのですが、塗装の状態が悪かった場合ラッカーの下の地金が変色してきたり、剥がれる場合があります。また、水分や汗を拭き取らないでおくとこれもラッカー剥がれや変色の原因になりますのでこまめに拭き取りましょう。
特にトランペットの場合は年月経過や使用とともに、手が触れる部分(バルブケーシング、マウスパイプ)はラッカー剥がれがどうしても起こりやすいです。
ゴールドラッカー仕上げ
上記のクリアラッカーに、金色や黄色・赤色系の塗料を混ぜて作られたラッカーです。特性はクリアラッカーとあまり変わりませんが、よりシャープで音の立ち上がりがよいといわれます。現在比較的安価なトランペットはクリアラッカーよりもゴールドラッカーを使用している場合が多いようです。これは見た目が金メッキに近い色で豪華で華やかに見えるためでもあります。
ノーラッカー仕上げ
真鍮地金を磨いたままで何の塗装も行っていない状態です。最初はクリアラッカーのようで輝きもあるのですが、徐々に酸化皮膜に覆われヴィンテージ感が出てきます。手入れの仕方が非常に良いと、飴色やべっこう色のようになり、まさにオンリーワンのトランペットといったヴィンテージ感が出ます。
演奏時、演奏後の表面についた水分や汗はそのままにしておくと青さび(緑青)や赤さびが発生し見た目も悪く、最悪穴が開く原因になるのでこまめに拭き取ります。発生した際にはできるだけ研磨剤入りのポリッシュは使用せず、ガーゼで擦り取るようにしたほうが、良質の酸化被膜まで落とすことがありません。
水分の拭き取りもガーゼを使用したほうがよいと思います。皮脂は酸化被膜の形成を促しますのである程度は残っていても大丈夫です。
音の特性としてはストレートに息が入り抵抗感も少なめなので表情をつけやすいことと、ラッカーなどに比べややダークで柔らかな深い響きと言われます。お手入れが難しく緑青が手に付くので、大人の方や楽器の扱いになれた上級者向けです。
色は一般的に10円玉の表面のような感じです。
銀メッキ仕上げ
真鍮を磨いたあと銀メッキを施したものです。銀メッキの前段階に銅メッキやニッケルメッキを行う場合もあるようです。ラッカーよりも厚さが薄いためにクリアで柔らかな音色になると言われています。やや抵抗感があるのでパワーが必要な場合があります。
見た目に美しく、手入れもしやすく耐久性もあるのでトランペットの表面仕上げとしては一番人気があります。ただこちらも年月経過や使用の程度で手ば触れる部分のメッキが点状や泡状に浮いてきたり、剥がれる場合があります。こちらもこまめに水分や汗は拭き取る必要があります。手入れせずに放置すると表面が黒ずみが出てきます(硫化銀)。その場合はシルバーポリッシュで磨きます。また市販のシルバークリーナーで化学分解する方法は銀メッキの摩耗がありません。
色はニッケルメッキや洋白に似ていますがやや白っぽいのが特徴です。
金メッキ仕上げ
上記銀メッキの代わりにに金を使用しメッキしたものです。一般的には銀メッキを施した上に薄く金メッキをかけるようです。見た目に非常に美しく華やかで豪華です。特質は銀メッキとやや似通っていますが、金属の密度が高いため鮮やかで華やか音も割れにくいなどの金メッキ特有の性質があります。こちらもラッカーに比べると抵抗感があるので上級者向けといわれます。金メッキは銀メッキに比べ膜が薄いためポリッシュを使うことは厳禁です。柔らかめのクロスで軽く拭いてください。見た目はラッカーやゴールドラッカーに似ていますが、より金に近い色で深く重厚で僅かに暗めの輝きです。こちらも放置していると黒ずみのような変色が現れるので、その場合のみシルバーポリッシュ等でごく軽く拭き取ります。一部のトランペットメーカー(シルキーなど)、やロータリートランペットで採用されることが多いです。
ニッケルメッキ仕上げ
安価なトランペットの塗装に使われます。地金に直接ニッケルをメッキしたものです。見た目は銀メッキに似ていますが奥行き感が少なく暗い輝きです。ややプラチナ寄りの色ですが、輝きに高級感があまり見られません。耐久性が高いメッキ方法ですが、工程管理が甘いようで手入れを怠るとメッキがそのまま大きく剥がれる場合があります。
ブラックニッケルメッキ仕上げ
ニッケルメッキの代わりにブラックニッケルをメッキするものです。ブラックニッケルとはニッケルとスズを混ぜたもので、見た目はいわゆるガンメタリックという色になります。その色合いも含有率により様々で白っぽいものから真っ黒に近いものまであります。インパクト大でごく一部のトランペットに採用されています。ブラックラッカーと見分けがつけにくい場合があります。メッキのままの場合とクリアをコートしたものがあります。
サテンシルバー仕上げ
銀メッキの仕上時に砂を吹き付けたり、刷毛やスチールウールでこすったりしてつや消し状態にしたものです。トランペットの音色の特質は銀メッキとほとんど変わりませんが、見た目に渋い感じです。ただ、研磨剤入りポリッシュを使うと艶が出てきて斑になってしまいます。また艶が出るのを恐れすぎ、全く手入れしないと黒紫に変色(硫化銀)して汚く見えます。このため現在トランペットではあまり使われていません。
その他
ヴィンテージラッカー、赤ラッカー、青ラッカー、その他の色ラッカーなどがあります。これらはごく少数派で、修理店のオプションや改造などで使われています。